札幌刑務所見学ツアー / 塀の中の暮らしと設備はどうなっている?
目次
罪を犯すか刑務所での面会以外、一般人が刑務所の中に「堂々」と入る方法は、年に一度だけ開催の開放イベントである『矯正展』しかありません。
北の都にある札幌刑務所は収容定員1,015人の規模。
住宅地や商業エリアもある東苗穂地域とは思えない別世界が、長大な塀に囲まれた向こう側に拡がる。
北海道らしい広大な敷地内には、懲役作業を行う農場や工場が幾つもあり、所内には死刑執行の刑場も存在している。
ここで毎年9月の最終日曜か10月第1日曜(あくまで傾向)に開催される「矯正展」は、普段覗うことが出来ない刑務所の内部に入れる唯一の機会だ。
本記事では、わたしが札幌刑務所内を見学した際に見聞した、施設の様子や受刑者服役生活の一端をご紹介致します。
尚、当然ながら監房がある収監施設に、カメラやメモ帳は持ち込めないので、画像はありません。
すべて見聞した時の記憶を後に書き起こしたので、事実誤認があるかもしれないことをご了承ください。
本庁舎はあくまでシャバの一部
よくドラマに出てくる受刑者との面会室。
札幌刑務所の場合、ここは厳密には収監施設とは別の建物だ。
どうやって繋がっているかは不明だが、面会室があるのは一般人も出入りできる本庁舎(事務棟)であり、服役施設はその背後に拡がっている。
本庁舎は2008年に建て替えした明るいビルで、小さな町の役場を思わせる造りだ。
このような厳重警備を想像していたが、ここまで大げさでは無かった(笑)
ただし、正門では当然警備からチェックを受け、来場の目的等を申告する。
ふらっと訪れて見て回る訳にはいかないが、ここでは刑務所に物品の納入する業者や、各種入札も行われており、わりと一般人の出入りは多い。
矯正展の時は自由に出入りでき、撮影も可能だった。
札幌刑務所矯正展
年に1度の矯正展では、開場9時を前に多くの市民が並ぶ。
行列の目的は刑務所農場で収穫されたタマネギやジャガイモ等の即売会。
タマネギ10キロ1袋が500円程度と格安だ。
正門から本庁舎までが矯正展のイベントエリアです。
多くのキッチンカーや屋台テントが並び、ステージではコンサートやYOSAKOIソーラン演舞イベントも行われ、とても賑わう。
刑務所見学ツアー
刑務所見学ツアーは当日の午前と午後の2回実施。
1回約200名程度の定員で、「東門」前のテントで受付をして並んで待機する。
事前予約は出来ない。
内部は撮影禁止なので、受付で貰う透明袋にカメラや携帯電話や金属製品を入れて携行し、見学ツアー中は袋から出してはいけない。
やがて門が開く。
ツアーの開始だ。
大きな鉄扉から入ったら、そこはもう「塀の中」だ。
その塀には、外からは視界に入らない脱走防止用のフェンスが張り巡らされている。
果たして電流が流れているのかは不明だが、普通に考えたらセンサーくらいは装備してそうだ。
巨大ホール
建物内で最初に案内されたのはテニスコートが何面も入るような広い空間。
清掃行き届き綺麗なうえ、採光を考慮した設計で内部に暗さが無い。
まるでショッピングモールのような、3階分もある高さの大きな吹き抜けがある大空間。
大学や学校の校舎みたいな雰囲気でもあるが、受刑者が屋内運動の際にも使用する場所であるり、多目的な用途がある。
雪のない季節「健常の受刑者」は屋外グランドや体育館で、バドミントン、卓球、ランニングなど懲役の合間に運動することができる。
また、身体に障害のある受刑者は、この三層吹き抜け空間にある、人工芝を敷いた一角で運動ができる。
そこには休憩できる木製のベンチがあり、雰囲気は公園風だ。
想像と違い、冷たいコンクリート打ちっぱなし壁や寒々しい内装ではなく、格子は木材を使うなど、意外と暖かみのある造作だった。
廊下
刑務官に誘導され1階から2階へと階段・廊下を進むが、やはり自然光入り暗さがない。
ただし天井は化粧板も無く屋根の折板材が丸見えで、電気配線やパイプが走っている。
脱獄防止の為なのかは判らないが、天井裏が無い構造だ。
収容房
雑居の一般収容房については、広さは12畳の和室だ。
そしてトイレと流し台スペース分は別にあるから、布団を敷けるスペースでまるまる12畳ある。
最大8人~5人が収容され、布団5組を敷いた状態を再現していたが、ゆとりはありそうに感じた。
各受刑者が使う小さな座机と棚が人数分ある。
天井から吊り下げた液晶テレビがあり、視聴が許可されている時間帯(18時から21時まで)なら、チャンネルは自由に観ることができる。
但し房内の「序列」いかんではチャンネル権は無い。
トイレと流し台
房内に設けられているトイレ。
必ず廊下から刑務官の目が届くよう、腰から上が見える小窓がついている。
ちなみに便器は基本的に洋式であり、ウォシュレットは装備されていない。
房にある流し台シンクには、水と湯を混合できる「混合水栓」ではなく単水の自在水栓が3つ付いていた。
ここから出てくるのは飲料水だろうから、当然お湯は無いことになる。
冬でも水で顔を洗う訳であるが、それにしてもまだ経年劣化していないステンレス製シンクは清潔感があり、大きくて部屋の収容人数からみてもゆとりがある。
大浴場
受刑者の浴場はちょっとしたスーパー銭湯より広い感じがした。
そして明るく清潔だ。
壁には銭湯ではお約束のタイル壁画があり、絵柄は富士山ではなかったが、北海道の風景だった。
ステンレス製の長大な湯船が2つ並んでいる。
シャワー付き洗い場が数列あり、ひとつひとつに番号が振ってある。
お湯と水が出る蛇口がたくさん並んでいた。
この大浴場、1度に60人が入れるそうで、他に二ヵ所ある。
入浴は週2~3回で1回15分と決められているから、効率よく洗髪や髭剃り、身体洗いをこなさないと時間切れになる。
個室
工場作業した日の夜や休日に、1人で過ごせる房がある。
和室3畳強くらいの狭い房だが、自然光が入りテレビやトイレ・洗面も完備。
独房イメージとは程遠い1人部屋は、かなり居心地良さそうだが、受刑者誰もが利用させて貰えるかは判らない。
当然模範囚ではなかろうか。
懲役
受刑者が懲役をこなす工場がたくさんある。
第1から第29工場(農場も含む)あり、その陣容は下記の通りだ。
◇木工(工場数2)就業人数72名
◇印刷(工場数1)就業人数77名
◇洋裁(工場数7)就業人数400名
◇金属(工場数2)就業人数80名
◇革工(工場数3)就業人数162名
◇農業(農場1) 就業人数5名
◇その他(工場数10)就業人数596名
◇職業訓練(工場数3)就業人数26名
わたしが見学した工場は「木工」「印刷」「洋裁」など。
どの工場も徹底して整理整頓されおり、汚れという物が殆ど無い。
各工場ごとに、更衣室、トイレ、食堂といった設備が完備されている。
房同様にトイレは刑務官が目が届くよう窓がある。
大便器トイレも例外では無いが、最低限下半身は見えないよう曇りガラスだが、基本的に全てが「見える」造りになっている。
洋裁工場では自衛隊の被服を製造しているらしく、迷彩柄の布が大量に積んであった。
注目は農場に従事する受刑者の少なさだ。
僅か5名が、即売会での長蛇の列に行き渡る数量の農産物を作っているのは驚きだ。
専門知識や体力に加えて、屋外作業ともなれば脱走のリスクもあるから、選ばれし模範囚の仕事なのかもしれない。
ちなみにここの農場で生産されたタマネギをふんだんに使った「刑務所カレー」は意外な旨さだった。
医務室
札幌刑務所の医務室は、小さな町の病院並みかそれ以上の設備がある。
内科、外科、歯科、レントゲンや内視鏡、CTスキャナーも完備しており、入院設備もある。
医務室のトイレは、他と違い「腰から下も丸見え」だった。
理由は不明。
食事
受刑者の食事は、実際に提供された「朝昼晩のメニュー」が3日分、サンプルとして展示してあった。
容器こそ味気ないステンレスの食器だが、栄養バランスは良さそうなオカズやデザートに加え、味噌汁、牛乳やジュースなどがつく。
ご飯は白米ではなく麦飯が基本。
肉や揚げ物もあり見た目も悪くない。
病院食より充実したメニューに感じたが、味つけはどうだろうか。
監視の目
とはいえ、刑務所であるから快適な生活はさせて貰えない。
朝から晩まで決められたタイムテーブルに沿って行動しなければならない。
当然、至るところに監視カメラはある。
全行程約1時間の刑務所見学ツアー。
ここに入るのは見学者としてだけでいたいのもですね。
札幌刑務所
札幌市東区東苗穂2条1丁目5-1
電話 011-781-2011
2019年度のイベント予定はまだ未定です。